2018年3月15日木曜日

「神の見えざる手」は誤用されている! ~ 超訳「国富論」を読んでの感想 ~

超訳「国富論」- 経済学の原点を2時間で理解する

大村大次郎先生の著書 "超訳「国富論」"を読みました。
「経済学の原点を2時間で理解する」というサブタイトルの通り非常に読みやすい本で、
アダム・スミスの名著のエッセンスを理解するには良い本だと思います。

国富論で有名なのは「神の見えざる手 (= An invisible hand)」です。

「個人個人が自分の利益追求することによって、
神の見えざる手に導かれるかのように社会全体の利益にもなっている」
(p002~p003)

このフレーズが独り歩きした結果

「国富論は経済の自由放任主義を説いたものだ」
「すべて市場に任せておけば社会のためになる」(p003)

というように、強欲資本主義者に悪用されてきたと著者は説きます。

「国富論というのは、経済社会が最低限のモラルを守る
ということを前提として書かれているのです」(p004)

という著者の主張が説得力を持つのは
本書を通読すればご納得いただけるかと思います。

現在の日本経済・世界経済の歪みというものを
国富論の視点から見つめなおすという意味で非常に参考になる本かと思います。

ちなみに、自分は経済学部の出身なので、
アダム・スミスについても多少勉強した記憶があります。

授業でならったことで一番印象に残っているのは
「国富論」というタイトルについてです。

国富論の原題は

”An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations

です。

ここで注目すべきなのは “Nations” と複数形になっていることです。
従って、国富論というのは誤訳で正しく訳すと「諸国民の富」なんですよ!
ということを授業で習ったわけですね。

色々調べてみますと、「国富論が誤訳というのが誤りである」という説もあり、
色々とややこしい部分がある話ではありますが、
著者が国富論で一番大事なメッセージとしてあげている

「現在の経済状況を丹念に調べ、その状況に応じた丁寧な対策を講じなければならない」
「国を豊かにする方法とは、すなわち国民生活を豊かにする方法なのであり、何よりもまず国民生活を豊かにするにはどうすればいいかを考えるべし」(p221)

という観点から言うと「諸国民の富」のがしっくりくる訳語かな?
なんてことを思い出しながら本書を通読致しました。

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